おととし、関西に旅行に行ったときの話。

何日かの滞在のうち、兵庫県三宮市の先輩の家に泊めていただくことになった。
学生寮みたいな感じのところで、決して上等では無かったんだけど夜通し周りの人たちと喋って楽しい時間を過ごした。

次の日が早かったので朝の６時台にはその家を出たと思う。
１０月と言えど向こうは寒くて小雨も降っていた。
朝早くから家の前を掃除している近所のおばあちゃんたちと爽やかな会話を交わす。
駅を目指して歩いていると道に迷ってしまった。
行きは先輩に案内されて分かったのだが、帰りは土地勘が無い。
そうこうしてるうちにグルリと一周してまたさっきのおばあちゃんに逢った。

「それやったら帰り道やし一緒に連れっててあげるわ」と案内してくれるおばあちゃん。
途中、おばあちゃんの生い立ちや病気のこと、その土地の歴史のこと等いろいろと話した。
１０分くらいすると目的地のバス停まで着いた。
バスが来るまでの時間、まだおばあちゃんは待ってくれた。
今度は自分の子供たちのことを話した。みんな独立して家を出て行ったそうだ。

最後に僕が学生であることを告げると、
「何でもいい、どんな形でも良いからちゃんと仕事をする人間になって欲しい」とお願いされた。
２０年間のうちたった１０～１５分の時間だったが、とても親しい時間だった。
その言葉だけで、ちゃんとブレずに生きれる。

バスが出発します。

１台通れば後ろがつかえるほどの小道での出来事。
昨日ふと思い出した。
あぁ、これはまた旅に出ないといけんなと思った。